なぜ、10歳から睡眠の質が低下していると言えるか?その理由は…睡眠のカギとなる「メラトニンの分泌量」が「10歳をピークに減少」するのが、医学的に見た私たち人間の特性だからです。

 メラトニンとは、脳の松果体から分泌されるホルモンのことです。このメラトニンは、体内時計を介して、脳の時間監視係の役割を果たしています。また、これが「睡眠と覚醒の周期」を司る重要な役割を担っています

ただし、このメラトニンの分泌量は、下のグラフのように、10歳ごろの成長期の子どもの頃が最も高く、その後“急速に低下”します。

メラトニン分泌量は10歳から低下

米井 嘉一『抗加齢医学入門 第3版』(慶應義塾大学出版会; 第3版、2019年)pp35-37に筆者作成・加筆

そして、このメラトニンの最も大きな役割が「睡眠」に対する作用と医学的に考えられています。シンプルに言えば、このメラトニンは睡眠薬のように副作用を起こすことがない「天然の睡眠薬」です。

メラトニンは、様々なところで活躍し、時差ボケを和らげ、筋肉痛や自閉症児の睡眠障害の治療にも役立っています。

このようにメラトニンの分泌量が10歳頃をピークに減少することから、私たち人間の「睡眠の質は加齢とともに低下する」と医学的に考えられています


しかも、ただでさえ加齢と共にメラトニンの分泌量が急速に低下しているにも関わらず、私たちの日常生活には、さらにこの分泌量を悪化させる原因がたくさんあります。その一例が、以下のものです。

メラトニンの分泌量を”悪化“させる日常生活の原因

  1.  寝る前の光刺激
  2.  寝る前のカフェイン摂取
  3.  交感神経の過剰刺激(激しい運動・熱いお風呂の入浴)
  4.  心身ストレス
  5.  悪しき睡眠環境(温度・湿度・騒音・寝具)
  6.  寝る前のアルコール(一時的には促進するが覚醒が増える)

米井 嘉一『抗加齢医学入門 第3版』(慶應義塾大学出版会; 第3版、2019年)pp60-62に筆者加筆

ただでさえメラトニンの分泌量が低下しているのに、私たちは日常生活の中で、さらに悪化させるようなことをしてしまいがちでしょう。

もちろん、このような情報は、彼らが届ける情報でも補えているところでしょう。しかし…「なぜ、これらの日常生活の行動がいけないのか?」その明確な理由は説明されていたでしょうか?

睡眠の重要なカギであるメラトニンの分泌量が10歳頃から低下していることを知っていれば、意識の高いあなたであれば、日常生活に対して意識高く行動していくでしょう。

ですが、このような医学的な理由をしなければ、意識高く行動することが少ないでしょう。むしろ、自分にとって都合の良い解釈をして、気がつけば悪習慣が身につくようになってしまうかもしれません。

これらの睡眠に関する不都合な真実を知ったあなたは今…どのような気持ちでしょうか?賢明なあなたであれば、もうお気づきでしょう。

私たちの多くは、彼らの検討外れで…間違ったとも言える情報のせいで、正しい睡眠の情報を全くと言ってよいほど受け取れていません

だから、私たちは彼らの悪影響で、彼らが”勝手に決めた”…「理想の睡眠時間の確保」「ムリな睡眠の質の向上(深い睡眠を増やす)」を強いられることで、かえって疲れてしまい、睡眠に悩みを抱えてしまうのでしょう。

だから、真面目な人ほど、「理想の時間を確保できないのは、自分のせいだ」「深く眠れないは、自分のせいだ」などと自責の念にかられてしまい、より深い悩みに入っていくのでしょう。

だから、勝手に理想と決められてしまったものではありますが…その理想の睡眠時間を確保するために、日常生活でムリをして、何とか時間を確保しようとするのでしょう。

もし、時間が確保できないなら、「短時間でも深く眠り続ければ良い」と間違った考え方をして、深く眠るために「ホットミルク」や「サプリ」を飲んだり、寝具などの睡眠環境を変えたりするのでしょう

中には寝酒まではいかないものの、アルコールで睡眠を促そうとするなど、ありとあらゆる手段を試してみるでしょう。さらには、それでもダメな場合は、副作用を気にせず睡眠薬に手を出してしまう人もいるでしょう。

睡眠時間のこだわりが負のスパイラルへ

「理想の睡眠時間の確保(睡眠時間が長いほうが良い)」
「夜中に目を覚ましてはいけない」など

間違った思い込みから、このような負のスパイラルが始まり、
睡眠がストレスになってしまうことも…

負のスパイラル…「理想の睡眠時間の確保(睡眠時間が長いほうが良い)」「深く眠り続けるのが良い(夜中に目を覚ましてはいけない)」という間違った思い込みから、このような負のスパイラルが始まり、深みにハマっていくのでしょう。

大変心苦しい話ですが、このようなことが理由で、こんなに辛く…恥ずかしい間違いがずっと続いているのです。

厚生労働省がデータから導いた科学的根拠や医学的な根拠が分かっていれば、こんな間違いをすることはないのですが、彼らがあなたに誤った睡眠の知識を刷り込んでしまったせいで、このようなことが続いているのです。

この点が、これまで語られることのなかった「睡眠の不都合な真実」です!

ここで改めて厚生労働省の運営する「生活習慣病予防のための健康情報サイト『e-ヘルスネット』」に書かれている睡眠に関することを見てみましょう。

e-ヘルスネットの中では、睡眠に関して単刀直入にこのように書いてあります。

「◯◯時間眠りたい!」と目標を立てないでください

”「◯◯時間眠りたい!」と目標を立てないでください”と、厚生労働省は明確に述べています。

あなたに間違った知識を刷り込んだ彼らは「理想の睡眠時間」を謳っていますが、国民の健康を守る厚生労働省は、これを真っ向から否定していると言ってもよいことを名言しています。

これを注意喚起と言わず、なんと言えば良いのでしょうか…

厚労省による睡眠時間の注意喚起(2)

”「◯◯時間眠りたい!」と目標を立てないでください”と、
厚生労働省は明確に述べている。

これも「理想の睡眠時間」を語る人たちを
真っ向から否定しているともとれる。

※画像はイメージです。厚生労働省の実在の人物ではございません。

厚生労働省は「“個人差”があるので、睡眠時間にこだわらないようにしてください」と名言しています。

そして、それと一緒に”「◯◯時間眠りたい!」と目標を立てないでください”と注意喚起しています。

他にも「どうしても眠気がないときは、思い切って寝床から出てください」「寝床にする時間が長すぎると、熟眠感が減ります」と明言し、時間へのこだわりをやめるように促しています。

ただし、不健全な「夜中の目覚め」をしないように…カフェインやアルコールについても注意喚起しています。

コーヒー・紅茶に含まれるカフェインは、安眠を妨げます。カフェインには利尿作用があり、トイレ覚醒も増えます。”

”寝酒はダメ。お酒は睡眠にとって百害あって一利なし。特に深酒は禁物です。寝酒をすると寝付きが良くなるように思えますが、効果は短時間しか続きません。飲酒後は、深い睡眠が減り、早朝覚醒が増えてきます。”

不眠症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html , (参照 20122-04-27)より引用

このように厚生労働省は私たちに対して明確に「睡眠時間は問題ではない」と伝えています。それに伴い”「◯◯時間眠りたい!」と目標を立てないでください”と、注意喚起をしています。

なぜなら…メラトニンの分泌量の医学的な視点からも分かる通り「10歳頃をピークに睡眠の質は低下」しているのですから。だから、時間や深さにこだわるよりも、「あなた自身に最適な安眠法」を習得し、それを習慣化していくことが重要でしょう。

それにも関わらず、私たちは「世界的に見て、日本人の睡眠時間は短い!」と危機感を煽る人たちによって、「時間が長くないといけない」と、間違った思い込みをさせられています。

中にはこの思い込みに苦しめられてしまい、せっかく睡眠を改善しようとしたのに、かえってその苦しみから、不眠症になってしまう人もいるようです。

だからこそ、私たちは彼らからの間違った睡眠に関する知識を、厚生労働省やメラトニンの分泌量のような医学的な視点から“正しい知識”を入れ、その正しい知識をもとに“正しい睡眠”をとるのが良いでしょう。

つまり、睡眠に関する正しい知識とは、理想の睡眠時間を追いかけたり、睡眠時間を長くしたり、深い睡眠を長くすることではなく…私たちの身体の特性に逆らわないような…

厚労省が推奨する自己流の安眠法とは…

睡眠に関する正しい知識とは、理想の睡眠時間を追いかけたり、睡眠時間を長くしたり、深い睡眠を長くすることではなく…私たちの身体の特性に逆らわないような「自己流の安眠法」を、正しい知識から習得することでしょう。

厚生労働省は、効果的に睡眠をとるには、睡眠時間を長くすることではなく…安眠を妨げる原因を見つけ出し、それを取り除くことが良いとしています。

しかし、どうやって「安眠を妨げる原因」を見つけ出すことができるのでしょうか?そして、その妨げる原因を取り除き「自己流の安眠法を習得」することができるのでしょうか?

私たちは、この問題をシンプル、ユニーク、かつ理論的に解決しました。

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